HOME / 日記 / 恭賀新年。ジャストプレイヤー株式会社の2011年にご期待ください
Date: 2011/01/01 | | Tags: Solaris, OpenSolaris, OpenSolaris始まった
恭賀新年。
今年もよろしくお願いします。
昨年は、弊社、ジャストプレイヤー株式会社は、激動の年でした。
別れ、新しい出会い。
実は、2年ほどまえから、会社の業態を大きく変えようという考えが背景にあるのですが、それ故に、組織に求められる人が異なってきます。ある人が突然いらなくなったとか、そういうわけではなくて、求められる仕事内容や質が異なっていくと、個々の立場で、それをやりたいのか、やりたくないのか、の意見は当然でてきます。結果的に別れがあったり、新たな出会いがあるのが自然な流れになるのですが・・・。
もちろん、社長はなんのために「会社」をやっているのか、誰のための「会社」なのか、常に悩みます。「どうあるべきか?」というのは、常々、考えました。
よく社長は常に孤独とは言いますが、時には孤独を感じる部分もある一方、やはり私には幸せなことに仲間がいます。仲間のためにがんばれるのは正直、うれしいことです。おかげで、組織もかなり筋肉質になってきました。
さて、弊社は今年で10期目となります。
10年続く会社はわずかといいますが、気がついたら10年たってしまいました。
そして、10年を持って、「原点回帰」したい所があります。
実は弊社の定款(会社を作るときに弊社は○○をする会社だよ!と記載したもの。会社の憲法のようなものと表現されることもあります)には、「ソフトウェアの賃貸」という記載があります。10年前から、インターネットを経由したソフトウェアの賃貸を考えており、それによって最初に生まれたソフトウェアが、ソフトウェアの分散配信システムです。
これは簡単に言えば、スマートクライアントとHTTPによるデータ通信システムなのですが、まさにこれはいま、iPhoneアプリなどではやっている物でもあるし、AJAXやFlashのアプリケーションもそうです。
「ぶっちゃけ、クラウドって、ぼくらの会社の10年前のテーマがそのものじゃない?」
今年のテーマは「原点回帰」です。
今年1年、次の物を、みなさんに約束したいと思います。
などなど。
詳しいことは、都度お話ししますが、特に今年はWikiPlusの進化がすごいことになるよと宣言しておきます。
来年は皆さんの期待に添うように、おもしろいことをスタートしていきます。
こうご期待!
そうそう、忙しくて、なかなかBlogが更新できずにいましたが、これからまた更新を始めようと思います。
今年もよろしくお願いします!
次は、OpenSolarisのユーザグループリーダーとして :)
正直な話、昨年は、Solaris界隈は厳しい年でした。SunがOracleに買収されて以降、Solaris界隈には大きな変化がありました。
昨年の後半に行くほど、明るい話題が多くなったのがうれしいところです。
今年は色々、発展的なことがあるんじゃないかなと思います。
前回のポストは非常に反響をいただきました。
続きは、本当は9月ぐらいに書きたかったのだけど、いくつか書きにくいこともあったり、忙しかったりとずるずるしていたら、今になってしまいました。
みなさん、概ね好意的で、もちろん中には批判的な意見もいただきましたけれど、雑誌にも意見を掲載していただいたようで、私としてはとてもうれしく思っています。
前回のポストのときに、知人から、なんだか奥歯に物が詰まったような言い回しが多くてよくわからないという話をいただきました。現状のことはわかるが、結論として何が始まったのかがわからない。あるいは、なんか言えないことがあるんじゃないの?的な想像されたり。
今回は、それを踏まえて私なりの結論を書いてみたいと思います。
まずは、前回のあらすじっぽいところから、新しい情報も含めてじわじわと・・・・。
OpenSolarisのONの話がわかりにくいと言われたので、LinuxやFreeBSDなどの例を加えて厳密なところは無視し、シンプルな概念を図にしてみました。
OSごとの作りの違いをまとめるとこうです。
OpenSolaris | Linux | FreeBSD | |
Kernel | ONに含まれる | 狭義のLinux部分 | FreeBSD Projectのご本尊 |
core utilsなど | ONに含まれる | GNU製が多い。ディストリビュータが決める。 | FreeBSD Projectのご本尊 |
各種ミドルウェア群など | ディストリビュータが決める | ディストリビュータが決める | Portsなどなど |
OpenSolarisは、元々、SolarisをOpenSource化するプロジェクト名でした。
プロジェクトの中心となるWEBサイト、http://www.opensolaris.org では、ONの開発だけでなく、それ以外のプロジェクトも活発に動いていました。実際、プロジェクトの成果物であるONをコアに、様々なOSのディストリビューションがリリースされました。
ところが2008年5月に、OpenSolarisというディストリビューションがリリースされ、OpenSolarisという言葉はプロジェクト名だけでなく、Sunがリリースしたディストリビューション名となりました。WEBサイトは、http://www.opensolaris.com 。ディストリビューションであるOpenSolarisは、LiveUSB、LiveCD、IPS(ネットワークレポジトリ)の3つの媒体でリリースされておりました。
最終的には4つのバージョンがリリースされ、現在はOpenSolarisという名前のディストリビューションは終了となりました。
ただ、ディストリビューションとしてのOpenSolarisは無くなりましたが、Oracleからは、「商用のOS」として、Solaris11がその技術的後継と位置される形になっています。
実際、OpenSolarisから、Solaris11Expressへのアップデートは可能で、最新のSolaris11Expressはsnv_151aです。
元SunのExpressは、MSのOutlook ExpressなどのExpressとは意味が異なり、「先出し版」みたいな意味合いの物です。ベータとはまた違います。
2010年8月、snv_147を最後にONのソースコードが更新されなくなりました。この話の流れはリークメモにより出てきたもので、Oracleによるプレスリリースではありませんが、実際に以降のソースコードは公開されていません。ただし、147までのものは公開されています。
例のリークメモでは、ONのソースコードはSolaris11のリリース後にCDDLで公開されることになっているため、クローズド化とは明言できませんし、そもそも正式にはOracleはクローズド化とは言っていません。ただし、Solaris11Expressの最初のバージョンがでた2010年11月以降、未だONのソースコードは公開されておりません。ちなみに、ON以外のソースコードはsfwnvとして公開されており、Solaris11にどのようなオープンソースのミドルウェアが含まれていくかは、これを追いかけていけばわかります。
一方、Illumos Projectは、2010年8月にスタートしました。
これは、ONのsnv_147からのspork(先割れスプーン)です。Sporkと言っているのは、Forkはしたくないという意図のあらわれで、今後、OracleがSolaris11のONのソースコードが公開されたら、それをなるべく追従するものにすると宣言しています。つまりSolaris11のONとは異なる物ではあるが、なるべく似た形になるようなOpenSourceとしての実装を目指しています。
すべてのOpenSolaris系のOSはONをコアにしているため、このプロジェクトにはいくつかのOpenSolaris系のディストリビューションチームが、直接的、間接的に、関与しています。主にNexenta系の人たちが積極的にメンテナンスしています。
かくして、事実上、OpenSolarisのONの後継は、下記の通りになりました。
(企業的な事情があって)だんまりを決め込んでいたOracleのSolaris開発チームですが、2010年11月、とうとう、堰を切ったように様々な動きが外に見えるようになりました。
まず、Solaris11Expressが2010年11月にリリースされ、snv_151aとなっています。
Solaris11 Expressがどのような機能を持っているかは、またこのBlogでも記載しますが、ざっくり書くと、主にIPS(パッケージングシステム)、Crossbow(ネットワーク仮想化)、ZFS周りの進化が目立っています。
11月にOracleからリリースされたのは、これだけではありません。公開されなかった最後のOpenSolarisが134bとして、IPSのreleaseレポジトリに公開されています。OpenSolaris 2009.06をインストール、そしてアップデートをすれば134bになります。
一方、ディストリビューションとしてのOpenSolarisを、オープンプロジェクトとして引き継いだものがあります。それが、OpenIndianaです。
OpenIndianaは、Solaris11のなるべく互換的な実装になるように作られたSporkで、最初のバージョンは、oi_147として2010年9月にリリース。2010年12月には、oi_148にアップデートされています。予定では来年の第一四半期(1〜3月)には、Stable版がリリースされる予定で、Stable版もバグフィックス、セキュリティフィックスがIPSにより更新される予定です。
OpenIndianaはビルド方法まで含めて公開されており、Illumos Projectのサブプロジェクトの扱い(やっている人たちは違う)になっています。しかし現時点で、ONはOpenSolarisのsnv_147をほとんどそのまま利用していますので、互換性は当然、十分です。現時点ではIllumosは別パッケージとなっておりますが、近いうちにIllumosをベースとすることを予定しています。
OpenIndianaは、Solaris11との関係を、CentOSとRedhat Enterprise Linuxの関係にしたいと考えています。CentOSもRHELとは完全互換ではないですが、実際には十分互換です。現時点のOpenIndianaは、ユーザエクスペリエンス的にはSolaris11Expressと十分に互換ですが、まるっと交換して動くほどには互換はありません。
私はOSの発展には、無料のソリューションが、必ず必要だと思っています。
今も隆盛なRedhat系Linuxですが、かつてRedhatLinux 9.0が終了したとき、多くのシステム会社やレンタルサーバ会社が、次に利用するOSを探すことになりました。Redhat Linuxが無くなったのは、これがカレントなのか安定版なのかわからない存在であったためです。RH社は、カレントをFedora、安定版をRHELにしたのです。
これですべてのユーザ層すべてを網羅してるように見えますが、ドロップしたユーザ層がいました。それが多くのシステム会社や、レンタルサーバ会社で、つまり、OSを無料で利用したいサーバユースのユーザです。
私もRHLはVer4から利用し、起業したあたりでRHL7、その後RHL9まで利用しました。みんなと同じようにRHLの終局とともに、次に利用するOSを探しました。RH社の指針は、「サーバ用途はRedhat Enterprise Linux」と言うことでしたが、これが有償のOSで年間10万ぐらいします。
そこで、上記の多くのシステム会社や、レンタルサーバ会社は、事情と背負う物にあわせて、Debianに流れた人たちがいたり、Suseに移動したり、RHELを買うようになる人たちもいたり様々でした。
その後、RHELと「まるっと交換可」のOSとして、無料なCentOSが出てきました。
いま、CentOS/RHELのシェアをみれば、結果はどうなったかはわかりますよね。
さて残念ながら「世の中にはOSにお金がでないプロジェクト」は、「相当量」存在します。このようなプロジェクトでは、安ければOSを買うものではありません。「OSが無料であること」が必要条件であり、無料でなければそのOSは利用の選択肢にもあがりません。なにしろ、十分に無料でプロダクションレベルで耐えられるOSが、今の世の中、いくらでもあるのですから。
たしかに、OSにお金がでないプロジェクトは、OSのディストリビュータの「お客様」ではありません。しかし、エンジニアとしては、どちらもやらなくてはならない仕事です。
どのOSを使うかは、概ねエンジニアが決めます。
お金が出ない案件にDebianやCentOSを使って、お金がでる案件はSolarisを使えるでしょうか?
お金が出ない案件にCentOSを使って、保守がある案件にはRHELを使えれば、覚えることはほとんど一つですみます。
製品に対して細かな運用ノウハウやTipsを備えていくためには、ほぼ同じものを商用でも無料でも使いたい。多くのエンジニアは、自宅でも自分のサーバを作ることがありますが、そのOSはおそらくほとんど無料のOSです。理想的には全く同じ物が良いぐらいです。
こうして、世界中の様々な末端にいるエンジニア達はCentOSを選び、技術を蓄え、必要なときにRHELのライセンスを購入しています。CentOSを使ったエンジニアは、ほとんど特別問題なくRHELを利用できますから、こういったユーザはイノベータになりがちで、Blogで情報を記載したり互助的なWEBサイトをつくります。RHELをつかうことになっても「保険」を買ってるイメージで、手間のかからないRHにとってはとても良いユーザになりがちです。
こういうユーザが増えると、情報は世界中のWEBサイトに広まります。情報がWEBサイトに掲載されると、若いエンジニアがそれを参考にして、自分用のWEB系システムを作ったり、サーバを立てたりします。
その人達が20代から30代になったころ、どのOSを使うのか、「決める立場」になります。
かくして、わたしもCentOSとRHELを使うことが増え、いくつかのシステムをCentOS/RHELを使うようになりました。そして何個かに一つだけ、RHELを購入する案件がでてきます。そんなときは「保証が欲しい」ので、少し大きめの案件です。ただ考えてみたら、一度もサポートを使ったことがありません。
簡単に言えば、CentOSがあるからRHELを選んでいるのです。
あなたにとっての、身近に使えるUNIX系OSはなんでしょうか?
Solaris系エンジニアは年々増えてはいますが、Linux系エンジニアはもっともっと増えています。
たしかに人件費は、Solaris系エンジニアよりも、Linux系エンジニアの方が安いのは事実ですが、この理由は、平均的な年齢が低いこと、大型、小型、安定志向など、様々な背負う物でことなるからです。
あるエンジニアにとって身近に使えるUNIX系OSがもしLinuxであれば、なるべくLinuxですべてのシステムを作りたいでしょう。2000年の頃は、ある程度大きくなるとSolarisを使わざるを得ないのが実情で、信頼が必要なシステムはSolarisを使いました。そういう感覚的なものは世代交代とともに変化し、「信頼が必要なシステムならSolaris」と思う世代(せいぜい1970年代)がJijy化して一線のエンジニアから去るとき、この常識も変化します。
ほとんどのケースでLinuxで行けるのが今の時代になると、多少無理をしてでも、Linuxでつくります。Solarisを使ってた世代からすれば、「Solaris使えば簡単なのに・・・」と、思っても、Solarisを指南する人がいない若いエンジニアしかいない会社では、たぶんSolarisには手を出せないでしょう。
ただ、今のSolarisは本当に良くできていて、この仮想化時代、フォーカスすると、様々な便利な機能があります。OSの隅々まで、突っ込んで調べられますし、ハイエンドにしか無いような便利な機能がたくさんついています。OpenSource系のアプリはコンパイルすればSolarisで大抵動くので、私のように「一番身近なOSがSolaris」のユーザにとっては、「Solarisを使わない理由はほとんど無い」のです。ただし、これは機能の面に関してですが。
「機能」メインでいくと、Solarisはとても良いOSです。マジでがんがん使ってください。
では、今のSolarisに何が必要か?というと、「まるっと交換可能な無償のOS」です。
機能メインでいくと、Solarisが選べるのが、選べなくなる理由は案件の規模です。
あるときはOSにお金がでない規模、あるときは出せる規模。このように案件をこなしてる末端エンジニアにとっていえば、CentOS/RHELをつかうか、最初から全部自分が何とかするつもりで、Debianを使った方が良いという結論になります。
こんなエンジニアが、きっと5年〜10年後には、大型システムを設計するエンジニアになるでしょう。
こうして、始まったのが、OpenIndianaです。
OpenIndianaは、OpenSolarisのsnv_147からのSporkですが、Stable版とDev版を出すことを目的としており、Solaris11とまるっと交換可能な状況を目指しています。
OpenIndianaは、OpenSolarisの世界を広げるのに役立つはずです。
実は、OpenSolarisとSolaris 10''には、次のような差がありました。
Solaris 10 | OpenSolaris | |
Linuxユーザに対して | つかいにくい | つかいやすい |
オープンソースミドルウェア | 動かすのに根性がいる物が何個かある | 動かないソフトは滅多にない |
プロダクションユース | 安定OS | カレント |
お値段 | 有償OS | 無償OS |
OpenSolarisはカレントとはいえ、それなりに安定していたため、OpenSolarisにStableブランチがあれば、OpenSolarisはもっと使いやすくなります。
そして、OpenSolarisをベースとしたプロダクションユースOS、Solaris 11の陰が見えてきました。Solaris11は、OpenSolarisとは異なり、プロダクションユースになるように、大調整が始まっています。
現在の軸にあわせるとこうなります。
Solaris 10 | OpenIndiana | Solaris 11 Express | |
Linuxユーザに対して | つかいにくい | つかいやすい | つかいやすい |
オープンソースミドルウェア | 動かすのに根性がいる物が何個かある | 動かないソフトは滅多にない | 動かないソフトは滅多にない |
プロダクションユース | 安定OS | dev/stable | Stableオンリー |
お値段 | 有償OS | 無償OS | 有償OS |
OpenIndianaは、Solarisのエンジニアを増やすためにつくられました。
OSにお金がでない案件であれば、OpenIndianaを使えばよく、お金がでる案件ならばSolaris11を使えばよい。
機能も、利用環境も合わせて、そろそろOpenSolaris系OSが使いやすい市場が、やっと始まってきました。
あとは、Oracleさんが、Solaris11をもっと簡単に購入できるようにしてくれれば、大分使いやすい環境に変化するのですが・・・
最後に。
Solarisをオープンソースにするというプロジェクト名から始まったOpenSolarisですが、ディストリビューション名にもなり、レポジトリの代名詞にもなりました。
ディストリビューションが無くなり、ONの更新がストップした今、OpenSolarisという名前は、何が残ってるのでしょうか。
私が思うに2つあります。
1つは、OpenSolaris系OSとしてのルーツの名前。
正統なものにSolaris11が出てきますが、OpenIndiana、Nexentaなど、いくつかの物が生まれていますし、これから先に作り出すこともできます。
2つめとして、コミュニティの名前。
特に日本のOpenSolarisのユーザグループは、皆さんで作り上げてきており、互助会的な側面も大きく成長し、様々なことができるようになってきました。勉強会、合宿だけでなく、日本語のMLへのポストでも、様々な問題解決のルートがあり、開発者まで伝わりやすい構造ができてきています。
今年のOpenSolaris界隈、盛り上がると良いですね。
とりあえず、デブサミ2011等も出席しますので、今後も、OpenSolaris系OSに注目してください。